将棋の館−盤上のドラマ−/盤上シアター81/最初で最後の名勝負−芹沢博文vs谷川浩司

最初で最後の名勝負−芹沢博文vs谷川浩司


  ”芹沢博文”−今の若い方はこの名を知らないだろうか。

 高柳一門の長兄であり、中原永世十段の兄弟子である彼は、”天才”であり”無頼漢”であった。

 あまりに鋭すぎ、自分で自分を見切ってしまった。

 ”ああ、俺は名人にはなれない”

 その後の彼は、何を目標として指しつづけていたのだろうか。

 そんな彼と谷川さんとの戦いを鮮明に記憶している。デビュー以来谷川さんの将棋を、

芹沢さんは高く評価してた。

 彼らの最初で最後の対決は、昭和56年B級1組順位戦だった。当時芹沢さんは”アイアイゲー

ム”などのTV番組に出演し”チョメチョメ八段”などと呼ばれ、半分は芸能人化していた。
 
 しかし、自分が目をかけていた谷川さんとの対局が近づくと、”どれだけ強くなったか、

俺が試してやる。”と豪語。

 酒も断ち、約束もキャンセルし谷川さんとの対局に備え、そして言葉通りの快勝。

 自戦記も谷川さんへの愛情に満ちたものだった。

”みな谷川のこの手が悪いという。ではどう指すかと問うと、皆黙って口を開かぬ。・・・

(中略)この時期の1敗は痛いだろうに、じーとしている。勝つことにこれほどの罪悪感

を覚えたのは初めてだ。・・・”

 名勝負であり、名文であった。

 そして谷川さんはこの痛恨の1敗を乗り越え、A級入りを果たす。

 その後の活躍は、皆さんご存知の通り。それは芹沢さんの予期した通りだったろうか。





十字架を背負った四段 伊奈祐介の試練

意地に殉じた名人位 信念の男・佐藤康光

酒と将棋とスポーツクラブ