将棋の館−盤上のドラマ−/死闘!激闘!熱闘列伝/時を戻せるのなら・・・

時を戻せるのなら・・・

第5期竜王戦7番勝負第7局 谷川VS羽生

▲83銀の局面

谷川VS羽生1図

 平成4年(1992年)、羽生は年度始めから破竹の22連勝を記録。秋には福崎をストレートで降して王座を
獲得。棋王・王座の二冠をひっさげ、三冠王谷川と竜王戦で激突した。
 今後の将棋界の主役を決めるシリーズは、3勝3敗。泣いても笑っても最終局を残すばかりとなった。
 
 谷川VS羽生1図より
 △46銀▲同角△同歩▲92銀成△47銀▲同金△同歩成▲同飛△58角▲71飛△22玉→谷川VS羽生2図

 △46銀から△58角。”光速の強襲”だが、銀を2枚渡し、敵飛車が自陣を直通。さらに飛車まで渡して・・・
 おいおい、大丈夫なのかい?
 谷川VS羽生2図は、いかにも何かありそうな局面だが・・・
 
△22玉の局面
谷川VS羽生2図
 ▲48飛△67金▲58飛△同金▲76角→谷川VS羽生3図  しかし結局羽生は▲48飛と飛車を引いた。真っ先に目につく▲23銀は△同玉▲21飛成△22金打で飛車か竜の どちらかが取られることになり先手まずいそうだ。  では▲42飛成はどうか?以下△同金▲31銀△13玉▲42銀成に△49飛で成銀を抜かれ、これもハッキリしない。  羽生の自重に対し谷川は△67金。アレレ?▲23銀の変化手順の金合いがなくなっちゃうぞ!  △67金の局面で、まず▲42飛成は△同金▲31銀△13玉▲42銀成の時、△78金以下詰み。 では、▲23銀は?  ▲23銀△同金(△同玉は金合いができないので、先手勝ち)▲42飛成△13玉。  図面は省くけど、何とこの局面、後手玉は不詰みだそうだ!△67の金を取って、先手の持ち駒金銀銀桂でも詰まない!  恐るべし!谷川浩司!控え室でも”さすがは谷川!”と驚嘆の声があがったそうだ。  だが・・・▲76角から3手後の一手が、”運命”の一手! ▲76角の局面
谷川VS羽生3図
 △59飛▲88玉△54桂▲35桂△33金引▲67角△66桂▲23銀△同金寄▲同桂成△同金▲同角成△同玉  ▲21飛成まで、羽生勝ち    ▲88玉の次の△54桂。この一手が明暗を分けた。ここは△43角と打ち、▲同角成△同銀となれば後手陣は締り、 むしろ後手の指せるわかれであったようだ。  後日谷川は”もしも神様が、一度だけ時を戻してあげよう、と言ってくれるのなら、この局面に戻りたい” と言っていた。  何年経っても、この時の△54桂は忘れることができない苦い思い出となった。  ▲35桂に△同金▲同歩△68金は、▲同金△79角▲78玉△56桂▲同歩△66桂▲67玉△68角成に▲66玉 と上部脱出を見せられて、捕まらないそうだ。  △54桂はノータイム。しかし▲35桂のあとの△33金引には30分。この時の彼の胸中はいかばかりか!  この一番に敗れることは、第一人者の地位からの転落を意味する。しかし、一時は指せる将棋が、今はどうやっても 負けになっている。勝負師・谷川にとって、長くて辛く、そして苦しい30分だったに違いない。  ▲67角の局面で後手に一歩あれば△34歩で何でもないが、その歩がない。  ▲67角の利きを止める手段が何もないとは!  最後▲21飛成を指す時の羽生の指先が、かすかに震えていたとか・・・彼もまた、この一番が持つ意味をわかりすぎ るほどわかっていたのだ。  平成5年1月6日午後4時57分、羽生三冠誕生。そしてこの後羽生は、七冠ロードを突っ走る。  谷川と羽生だけでなく、何か将棋界にとっても大きな意味のある一番だったような気がする。  
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