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王将位−伝統が彩る幾多の名勝負


 昭和26年、名人戦を朝日に持って行かれた毎日は、対抗手段として王将戦を発足。
 この棋戦の大きな特徴は”指し込み制”の導入。つまりどちらかが3勝差をつけた時点で、タ
イトルは決定。残りの対局は”半香”で指す。
 これを聞いた升田は大反対した。もしも名人が指し込まれるようなことになったら、どうする
んだ!しかし木村名人は、名人が八段に指し込まれるなんてことはないよ、と賛成にまわった。
 やがてくる悲劇も知らず・・・
 第1期王将戦は皮肉なことに、指し込みに反対していた升田が、木村名人を香落ちに追いこん
だ!
 しかしながら、実際に香落ちの対局は実現しなかった。あの有名な”陣屋事件”がおきたから
である。
 関係者が故人となった今、真相は窺い知ることはできないが、衰えた名人を傷つけたくないと
いう升田の優しさではないだろうか?−邪推ですが・・・
 −名人に香を引くまで帰らない−升田少年はこう書置きして家を飛び出した。
 子供の頃の夢が実現する日がやってきた。
 昭和31年1月、升田は弟弟子の大山名人を指し込む。しかも続く香落ちでも勝利を収める!
 なお現在の王将戦は”記録上”香落ちが残るだけで、実際には対局しない。つまり制度の上か
らも今後絶対にありえない!
 まさに”空前絶後”の記録なのである。

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 伝統の重さか、王将戦には幾多の名勝負、歴史的な大一番が多いような気がする。
 昭和41年、大山王将に挑んだのは”打倒大山””打倒振り飛車”を声高に叫ぶ山田道美。
 山田は第4局までに3−1とリード。悲願の打倒大山成ると誰もが思っただろうが、王者
大山は残りの3番を立て続けに連破!4−3で山田の悲願を打ち砕く。
 しかし無敵を誇った大山にも、時代の流れは非情。昭和48年、挑戦者の中原にストレート
で敗れ、ついに無冠。

 記憶に新しい大一番は2年越しの七冠フィーバー。
 六冠を引っさげた羽生が、”夢の七冠”を目指し谷川の持つ王将位に挑んできたのは平成七年
だった。
 七冠を望む世論は谷川につれなかった。そして第1局後に起きた悪夢の阪神大震災。
 神戸在住の谷川は、実家は全壊。自身もわずか1日の経験ではあるが、おにぎり1個の配給
という生活を味わった。
 逃げる谷川を、羽生が追いかけて3−3。決戦の第7局は千日手。指し直し局は何と、千日手
局の相手側を持って指す−驚きの展開は谷川が制し、意地の七冠阻止を果たした。

 これでしばらく七冠はない−誰もがそう思ったことだろう。何しろ6つのタイトルを全て防衛
し、なおかつ王将戦の挑戦者決定リーグで優勝しなくてはならないのだから・・・
 しかし翌年、谷川の前に座っているのはまぎれもなく羽生だった。それも前年同様六冠をひっ
さげて・・・

 この年の王将戦はこの時点で勝負がついていた。破竹の勢いの羽生に比べ、谷川には全くと言
っていいほど好材料がなく、また不調でもあった。
 平成8年2月14日、史上初の七冠誕生。

歴代の王将タイトル保持者
歴代王将タイトル保持者
年度1 年度2 タイトル獲得者 対戦相手 リーグ戦 備考
1 S.26 1951 升田幸三 ○○●○○ 4−1 木村義雄   升田、名人を指込むも陣屋事件で対局拒否
2 S.27 1952 大山康晴 ○●●○●○○ 4−3 丸田祐三    
3 S.28 1953 大山康晴 ○○●千○●○ 4−2 升田幸三    
4 S.29 1954 大山康晴 ○●○○○ 4−1 松田茂行   史上初のタイトル戦での香落ち指される
5 S.30 1955 升田幸三 ○○○ 3−0 大山康晴   升田、名人に香を引き、香落ちも勝利
6 S.31 1956 升田幸三 ○○●●○○ 4−2 大山康晴    
7 S.32 1957 大山康晴 ●●○○●千○○ 4−3 升田幸三    
8 S.33 1958 大山康晴 ○○○ 3−0 高島一岐代    
9 S.34 1959 大山康晴 ○●○○●○ 4−2 二上達也    
10 S.35 1960 大山康晴 ●●○○○○ 4−2 二上達也    
11 S.36 1961 大山康晴 ○○○ 3−0 加藤一二三    
12 S.37 1962 二上達也 ●○○○●○ 4−2 大山康晴    
13 S.38 1963 大山康晴 ○○○ 3−0 二上達也    
14 S.39 1964 大山康晴 ○○●○○ 4−1 加藤博二    
15 S.40 1965 大山康晴 ●○●●○○○ 4−3 山田道美   史上初!1勝3敗からの大逆転!
16 S.41 1966 大山康晴 ○○●○○ 4−1 加藤一二三    
17 S.42 1967 大山康晴 ○○●○●○ 4−2 加藤一二三    
18 S.43 1968 大山康晴 ○○○○ 4−0 内藤國雄    
19 S.44 1969 大山康晴 ○●○○○ 4−1 二上達也    
20 S.45 1970 大山康晴 ○●●○●○○ 4−3 中原 誠    
21 S.46 1971 大山康晴 ●○○○●●○ 4−3 有吉道夫    
22 S.47 1972 中原 誠 ○○○○ 4−0 大山康晴   大山、遂に無冠!
23 S.48 1973 中原 誠 ○●●○○○ 4−2 米長邦雄    
24 S.49 1974 中原 誠 ○●○○●●○ 4−3 米長邦雄    
25 S.50 1975 中原 誠 ○○●○○ 4−1 有吉道夫    
26 S.51 1976 中原 誠 ○●●○○○ 4−2 大山康晴    
27 S.52 1977 中原 誠 ○●○●○○ 4−2 有吉道夫    
28 S.53 1978 加藤一二三 ●○○○○ 4−1 中原 誠    
29 S.54 1979 大山康晴 ○○●○●○ 4−2 加藤一二三    
30 S.55 1980 大山康晴 ●○○○○ 4−1 米長邦雄    
31 S.56 1981 大山康晴 ●○●●○千○○ 4−3 中原 誠    
32 S.57 1982 米長邦雄 ●○○○○ 4−1 大山康晴    
33 S.58 1983 米長邦雄 ○○●○○ 4−1 森 けい二    
34 S.59 1984 中原 誠 ○●○○○ 4−1 米長邦雄    
35 S.60 1985 中村 修 ○○○●●○ 4−2 中原 誠    
36 S.61 1986 中村 修 ●○○●○○ 4−2 中原 誠    
37 S.62 1987 南 芳一 ○●○●●○○ 4−3 中村 修    
38 S.63 1988 南 芳一 ○○○○ 4−0 島 朗    
39 H.元 1989 米長邦雄 ○●●●○○○ 4−3 南 芳一    
40 H.2 1990 南 芳一 ●○●○○○ 4−2 米長邦雄 第40期王将リーグ戦  
41 H.3 1991 谷川浩司 ●○○○○ 4−1 南 芳一    
42 H.4 1992 谷川浩司 ○○○○ 4−0 村山 聖    
43 H.5 1993 谷川浩司 ○○●○●○ 4−2 中原 誠   2日制タイトル戦が1日指しきりの事態に
44 H.6 1994 谷川浩司 ○○●●○●千○ 4−3 羽生善治 第44期王将リーグ戦 死闘!執念の七冠阻止!
45 H.7 1995 羽生善治 ○○○○ 4−0 谷川浩司   空前絶後!夢の七冠達成
46 H.8 1996 羽生善治 ○○○○ 4−0 谷川浩司    
47 H.9 1997 羽生善治 ○○●○○ 4−1 佐藤康光 第47期王将リーグ戦  
48 H.10 1998 羽生善治 ●○○○○ 4−1 森下 卓    
49 H.11 1999 羽生善治 ○○○○ 4−0 佐藤康光 第49期王将リーグ戦  
50 H.12 2000 羽生善治 ○●○○○ 4−1 谷川浩司 第50期王将リーグ戦  
51 H.13 2001 佐藤康光 ○○●○●○ 4−2 羽生善治 第51期王将リーグ戦  
52 H.14 2002 羽生善治 ○○○○ 4−0 佐藤康光 第52期王将リーグ戦  
53 H.15 2003 森内俊之 ○●千○○●○ 4−2 羽生善治 第53期王将リーグ戦  
54 H.16 2004 羽生善治 ○○○○ 4−0 森内俊之 第54期王将リーグ戦  
55 H.17 2005 羽生善治 ○○○●●●○ 4−3 佐藤康光 第55期王将リーグ戦 タイトル戦史上2度目の3連敗3連勝
56 H.18 2006 羽生善治 千●○○○●千●○ 4−3 佐藤康光 第56期王将リーグ戦  
57 H.19 2007 羽生善治 ○○●○○ 4−1 久保利明 第57期王将リーグ戦  
58 H.20 2008 羽生善治 ○●●○●○○ 4−3 深浦康市 第58期王将リーグ戦  
59 H.21 2009 久保利明 ○●○○●○ 4−2 羽生善治 第59期王将リーグ戦  
60 H.22 2010 久保利明 ○●○○●○ 4−2 豊島将之 第60期王将リーグ戦  
61 H.23 2011 佐藤康光 ○○○●○ 4−1 久保利明 第61期王将リーグ戦  
62 H.24 2012 渡辺 明 ○○●○○ 4−1 佐藤康光 第62期王将リーグ戦  

歴代リーグ戦
年度              
36 S.61 中原 誠 5−1 米長邦雄 3−3 加藤一二三2−4 塚田泰明 5−1 谷川浩司 2−4 森 鶏二 3−3 有吉道夫 1−5
37 S.62 中原 誠 5−1 塚田泰明 2−4 米長邦雄 3−3 森 鶏二 1−5 高橋道雄 2−4 島 朗  2−4 南 芳一 6−0
38 S.63 中村 修 3−3 中原 誠 3−3 米長邦雄 3−3 島 朗  5−1 加藤一二三2−4 谷川浩司 3−3 塚田泰明 2−4
39 H.元 島 朗  2−4 米長邦雄 4−2 谷川浩司 4−2 中原 誠 4−2 加藤一二三2−4 中村 修 3−3 屋敷伸之 2−4
41 H.3 米長邦雄 4−2 森下 卓 1−5 屋敷伸之 1−5 中原 誠 4−2 谷川浩司 4−2 羽生善治 3−3 森内俊之 4−2
46 H.8 谷川浩司 4−2 中原 誠 3−3 村山 聖 4−2 森内俊之 1−5 高橋道雄 2−4 藤井 猛 2−4 丸山忠久 3−3
48 H.10 佐藤康光 3−3 谷川浩司 3−3 丸山忠久 4−2 中原 誠 4−2 森下 卓 5−1 中村 修 1−5 屋敷伸之 2−4

個人別獲得回数
順位 回数 登場 獲得率 獲得者名
1 20 26 .769 大山康晴
2 12 16 .750 羽生善治
3 7 13 .538 中原 誠
4 4 7 .571 谷川浩司
5 3 5 .600 升田幸三
5 3 9 .333 米長邦雄
5 3 5 .600 南 芳一
8 2 3 .667 中村 修
8 2 4 .500 久保利明
8 2 8 .200 佐藤康光
11 1 5 .200 二上達也
11 1 5 .200 加藤一二三
11 1 2 .500 森内俊之
11 1 1 1.00 渡辺 明

永世王将資格 通算10期
永世王将 大山康晴
  羽生善治

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