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名人位−その伝統と栄光の重み


 ほとんど全ての棋士が、名人になるために凌ぎを削っている−そういっても
過言ではないでしょう。

 伝統の名人位は13世名人関根金次郎までは世襲制でした。安土桃山時代、織田信長に謁見
した大橋宗慶(当時)は、その桂使いを激賞。信長より”桂”の字を賜り以後、代々伝わる
”大橋宗桂”の誕生となります。(もっともこれは将棋所の作り話らしいのですが・・・(^^ゞ)

 江戸時代は幕府の庇護を受け、将棋所として大橋家・伊藤家が名人位を世襲していきます。
 当時は八段は次期名人候補。そのため将棋所以外の人間は、八段になることはほとんどでき
ませんでした。”棋聖”と呼ばれ、幕末最強の棋士だった天野宗歩の悲劇は、ここに端を発して
いるわけですね。

 江戸幕府が崩壊すると、庇護を失った将棋所も崩壊します。ようやく家元以外の人間、民間
棋士の小野五平が12世名人となります。

 次の名人争いは、関根と坂田三吉のあいだで熾烈を極めます。力の落ちてきた関根とは逆に
坂田は円熟期を迎えます。
 関根を破り意気上がる坂田を待ちうけていたのは、関根の弟子土居市太郎。(大内九段の師匠)
 勝てば次期名人に大きく近づく一番でしたが、勝勢の将棋を終盤痛恨の逆転負け。
 13世名人には関根が就位します。

 実力的には峠を越えた自分が名人−このことが関根をして”実力制名人”を決意させたので
しょう。
 昭和9年関根は勇退を表明。翌昭和10年から2年間9人の棋士達による”第1期名人戦”
(リーグ戦の優勝者が名人位獲得)が開始されました。

 最終戦までもつれこんだ名人位の行方は、首位を走る木村義雄八段が、追う花田長太郎八段
に快勝。ついに記念すべき初代実力制名人となったのです。

 木村先生の名人獲得は8期ですが、当初名人戦は2年か3年ぐらいでおこなわれていました。
 また”挑戦資格なし”で防衛が2期。実質木村先生の時代は20年ぐらいだと思います。

 ”常勝木村”を倒したのは木見門下の”弟弟子”大山康晴。
 木村名人をして”良き後継者を得た”といわせた大山は5期連続の名人位獲得。十五世名人
の資格を獲得します。

 しかし昭和32年・33年兄弟子升田幸三にたたきのめされます。この間升田は史上初の
3冠王達成。もっとも輝いていた時代でした。

 翌34年から何と13期連続大山の天下。名人在位18期−絶対に破れないであろう記録を
残して、名人位は大山から中原へ移りました。

 対大内との死闘・剃髪挑戦の森・宿命のライバル米長の3度の挑戦などを退け、中原は9連覇
を達成します。

 しかしそこに立ちはだかったのは”神武以来の天才”加藤一二三。実質10番勝負となった
死闘は、加藤が制し初挑戦から実に22年目で悲願の名人位を手にするのです。

 −と、ここまでが前半ですね
 以下は後日加筆します。ただ中原名人までは、その時の棋界の最強者が名人になっていた感があり
ますが、谷川以降の17年は名人位も”身近になった”のではないかと感じます。
 事実これ以降4期連続名人位を保持したものは現れていません。


(設立当初は毎日主催、第9期から朝日主催、第36期から毎日主催、第66期から毎日・朝日共催)


歴代の名人タイトル保持者
歴代名人位保持者
年度1 年度2 タイトル獲得者 対戦相手 A級順位戦
1 S.12 1937 木村義雄     (二位)花田長太郎  
2 S.15 1940 木村義雄 ○○千千●○○ 4−1 土居市太郎  
3 S.17 1942 木村義雄 ○○○○ 4−0 神田辰之助  
4 - - 木村義雄     挑戦資格者なし  
5 - - 木村義雄     挑戦資格者なし  
6 S.22 1947 塚田正夫 ●●△○○千○千○ 4(1持)2 木村義雄  
7 S.23 1948 塚田正夫 ●○○●千○○ 4−2 大山康晴  
8 S.24 1949 木村義雄 ●○●○○ 3−2 塚田正夫  
9 S.25 1950 木村義雄 ○○●●○○ 4−2 大山康晴  
10 S.26 1951 木村義雄 ○●○○●○ 4−2 升田幸三  
11 S.27 1952 大山康晴 ●○○○○ 4−1 木村義雄  
12 S.28 1953 大山康晴 ○○●○○ 4−1 升田幸三  
13 S.29 1954 大山康晴 千○○○●○ 4−1 升田幸三  
14 S.30 1955 大山康晴 ○●○○●○ 4−2 高島一岐代  
15 S.31 1956 大山康晴 ○○○○ 4−0 花村元司  
16 S.32 1957 升田幸三 ○●○○●○ 4−2 大山康晴  
17 S.33 1958 升田幸三 ○○○△●●○ 4(1持)2 大山康晴  
18 S.34 1959 大山康晴 千●○○○○ 4−1 升田幸三  
19 S.35 1960 大山康晴 ●○○○千○ 4−1 加藤一二三  
20 S.36 1961 大山康晴 ○○○●○ 4−1 丸田祐三  
21 S.37 1962 大山康晴 ○○○○ 4−0 二上達也  
22 S.38 1963 大山康晴 ○○○●○ 4−1 升田幸三  
23 S.39 1964 大山康晴 ●○○●○○ 4−2 二上達也  
24 S.40 1965 大山康晴 ○○○●○ 4−1 山田道美  
25 S.41 1966 大山康晴 ●●○○○○ 4−2 升田幸三  
26 S.42 1967 大山康晴 ○○○●○ 4−1 二上達也  
27 S.43 1968 大山康晴 ○○○○ 4−0 升田幸三  
28 S.44 1969 大山康晴 ●○○●●○○ 4−3 有吉道夫  
29 S.45 1970 大山康晴 ○●○○○ 4−1 灘 蓮照  
30 S.46 1971 大山康晴 ○●●○●○○ 4−3 升田幸三  
31 S.47 1972 中原 誠 ○●●○●○○ 4−3 大山康晴  
32 S.48 1973 中原 誠 ○○○○ 4−0 加藤一二三  
33 S.49 1974 中原 誠 ●○○●○●○ 4−3 大山康晴  
34 S.50 1975 中原 誠 ●○○千●●○△○ 4(1持)3 大内延介  
35 S.51 1976 中原 誠 ○●●○○●○ 4−3 米長邦雄  
36 S.53 1978 中原 誠 ●○●○千○○ 4−2 森 けい二  
37 S.54 1979 中原 誠 ●●○○○○ 4−2 米長邦雄  
38 S.55 1980 中原 誠 ○●△○○○ 4(1持)1 米長邦雄  
39 S.56 1981 中原 誠 ○○○●○ 4−1 桐山清澄  
40 S.57 1982 加藤一二三 △●○●○千○●千○ 4(1持)3 中原 誠  
41 S.58 1983 谷川浩司 ○○○●●○ 4−2 加藤一二三  
42 S.59 1984 谷川浩司 ○○○●○ 4−1 森安秀光  
43 S.60 1985 中原 誠 ○○○●●○ 4−2 谷川浩司  
44 S.61 1986 中原 誠 ○○●○○ 4−1 大山康晴  
45 S.62 1987 中原 誠 ●●○○○○ 4−2 米長邦雄  
46 S.63 1988 谷川浩司 ○○●○●○ 4−2 中原 誠  
47 H.元 1989 谷川浩司 ○○○○ 4−0 米長邦雄  
48 H.2 1990 中原 誠 ○●○●○○ 4−2 谷川浩司  
49 H.3 1991 中原 誠 ○○○●○ 4−1 米長邦雄  
50 H.4 1992 中原 誠 ●●○●○○○ 4−3 高橋道雄 第50期A級順位戦
51 H.5 1993 米長邦雄 ○○○○ 4−0 中原 誠 第51期A級順位戦
52 H.6 1994 羽生善治 ○○○●●○ 4−2 米長邦雄 第52期A級順位戦
53 H.7 1995 羽生善治 ○○●○○ 4−1 森下 卓 第53期A級順位戦
54 H.8 1996 羽生善治 ○○○●○ 4−1 森内俊之 第54期A級順位戦
55 H.9 1997 谷川浩司 ○●○○●○ 4−2 羽生善治 第55期A級順位戦
56 H.10 1998 佐藤康光 ●○●○●○○ 4−3 谷川浩司 第56期A級順位戦
57 H.11 1999 佐藤康光 ○○●●●○○ 4−3 谷川浩司 第57期A級順位戦
58 H.12 2000 丸山忠久 ○○●●●○○ 4−3 佐藤康光 第58期A級順位戦
59 H.13 2001 丸山忠久 ○●千●○●○○ 4−3 谷川浩司 第59期A級順位戦
60 H.14 2002 森内俊之 ○○○○ 4−0 丸山忠久 第60期A級順位戦
61 H.15 2003 羽生善治 ○○○千○ 4−0 森内俊之 第61期A級順位戦
62 H.16 2004 森内俊之 ○○●○●○ 4−2 羽生善治 第62期A級順位戦
63 H.17 2005 森内俊之 ●○○○●●○ 4−3 羽生善治 第63期A級順位戦
64 H.18 2006 森内俊之 ○○●○●○ 4−2 谷川浩司 第64期A級順位戦
65 H.19 2007 森内俊之 ●●○○○●○ 4−3 郷田真隆 第65期A級順位戦
66 H.20 2008 羽生善治 ●○○○●○ 4−2 森内俊之 第66期A級順位戦
67 H.21 2009 羽生善治 ○●○●●○○ 4−3 郷田真隆 第67期A級順位戦
68 H.22 2010 羽生善治 ○○○○ 4−0 三浦弘行 第68期A級順位戦
69 H.23 2011 森内俊之 ○○○●●●○ 4−3 羽生善治 第69期A級順位戦
70 H.24 2012 森内俊之 ○●○●○○ 4−2 羽生善治 第70期A級順位戦
71 H.25 2013 森内俊之 ○○●○○ 4−1 羽生善治 第71期A級順位戦
72 H.26 2014 4−? 第72期A級順位戦

個人別獲得回数
順位 獲得 登場 獲得率 獲得者名 永世称号 実力制名人
1 18 25 .720 大山康晴 十五世名人 三代
2 15 18 .833 中原 誠 十六世名人 五代
3 8 10 .800 木村義雄 十四世名人 初代
3 8 11 .727 森内俊之 十八世名人 十二代
5 7 13 .538 羽生善治 十九世名人 九代
6 5 11 .455 谷川浩司 十七世名人 七代
7 2 3 .667 塚田正夫 二代
7 2 10 .200 升田幸三 四代
7 2 3 .667 佐藤康光 十代
7 2 3 .667 丸山忠久 十一代
11 1 4 .250 加藤一二三 六代
11 1 8 .125 米長邦雄 八代

永世名人資格 通算5期
名人獲得者は九段の資格を有す
名人獲得者は実力制名人の資格を有す

竜王位へ

棋聖位へ

酒と将棋とスポーツクラブ

名人位−その伝統と栄光の重み